| 【heuristic ways】より『ミクロ寄生とマクロ寄生(http://d.hatena.ne.jp/matsuiism/20090924/p1)を転載します。家畜文化には、知られざる面があり、ヒトと家畜の共生活は、人畜感染症の育成源になるとのこと。多くの家畜を飼っている民族ほど、伝染病や寄生虫にたかられることになるとのことでした。神の怒りとされる疫病は、中東家畜文化が生みだした現象ではないか?との示唆があります。採集部族でも、薬草などによる中毒や麻薬効果により神憑り、神祟りのようなことは起こっただろうとも思います。東洋と西洋、農耕、採取、漁労部族と狩猟・遊牧部族では、異なった外圧があったことが考えられます。 -----------------------------------転載 少し前に、『変身のための起源論』というブログ(現在は『明夜航記』というタイトルで継続中)で、「ヒトと動物の関係史」というテーマを取り上げていることを知り、興味深く読ませていただいたのだが、その中に次のような指摘があった。 |
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じつは家畜文化には、知られざる暗面が存在します。ヒトと家畜の共生活は、〈人畜感染症〉の育成源になるのです。そこで多くの家畜を飼っている民族ほど、伝染病や寄生虫にたかられることになる。『旧約聖書』でたびたび〈神の怒り〉として記録される疫病も、おそらく中東家畜文化が生みだした現象ではないでしょうか?
なお恐ろしいことには、そのような〈人畜感染症〉のキャリアー民族が、他民族と接触すると、免疫のない側ではいっぺんに「大量死」が起こります。中世ヨーロッパを打ちのめした〈黒死病〉も、このようにして中東からもたらされたものでした。
さらにそのヨーロッパ人が大航海に乗り出すと、世界中の先住民が大量病死してしまった。また移住者が持ち込んだ犬・鼠らも、同じように病源となり、先住民や野生動物に大打撃を与えました。
そこですなわち家畜文化は、それを飼う者たちに「死神」を寄生させる-と言うこともできるのです。(「家畜文化はヒトをも変えた」02/24/2007)
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これはすごく面白いと思って、このあたりのことをもっと調べてみたいと思っていたのだが、先日書店に行ったとき、ウィリアム・H・マクニール『疫病と世界史』(中公文庫、上下巻、2007年)*1という本を見つけた。まだ途中までしか読んでいないが、いや、これは人間中心主義的な世界史の見方に重大な変更を迫る画期的な研究だと思う。のみならず、狩猟、農耕・牧畜、文明の発生、国家の盛衰、宗教の伝播等において、「目に見えない」寄生生物が及ぼした影響を考慮に入れると、謎めいた世界史の暗部がパズルを解くように推理できるといった展望も与えてくれる。梅棹忠夫氏が宗教と伝染病のアナロジーに注目していたことも、こういう展望につながってくるように思う。*2
とりあえず重要と思えるポイントをメモしておきたい。
マクニール氏の見方がユニークなのは、疫病や寄生生物(病原体)の問題を、健康な身体を侵す異常で例外的な事態や原因と見るのではなく、人類が長期的に他の生物との間で獲得・形成してきた生態的バランス、言い換えれば「食物連鎖」のパターンの変動という観点から捉えていることである。さらに、氏はウイルスやバクテリアなどのミクロの寄生生物と、ライオンやオオカミなどの大型肉食動物や人類自身を含むマクロの寄生生物とを、特に区別しない。あるいは、両者の間にある種の対応があると考えている。
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疾病や寄生という現象は、生物界全般にわたって、重要な役割を演じている。ある生物体にとっての食物獲得の成功が、そのままその宿主(やどぬし)にとっては、いまわしい感染あるいは発病を意味するのである。そしてあらゆる動物が食物を他の生物に依存している。人類も例外ではない。(中略)
ミクロの寄生生物は、多細胞生物の場合もあるが、ウイルス、バクテリアなど多くは微小な生物体で、人体の組織内に入り込み、そこで彼らの生命維持のしくみにかなった食物を摂取する。ある種のミクロ寄生生物は重い病気を引き起こし、短時間のうちに宿主を死に到らしめるが、また宿主の体内に免疫反応を生じさせ、逆に彼らの方が殺され駆逐されてしまう場合もある。(中略)
マクロ寄生生物の行動も同様に多彩をきわめる。人間や他の動物を捕食する際のライオンやオオカミのように、即座に宿主の生命を奪ってしまう者もいれば、宿主を不定期間生かしておく連中もいる。
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さらに後になって、食物生産ということが、ある共同体にとってひとつの生活形態となった時、緩和された形のマクロ寄生とでもいうべきものが可能になった。つまり、征服者が食物を生産者から奪い去りそれを消費することで、労働に従事する者への新しい形の寄生体となったのである。特に肥沃な地方では、この種の人間同士の寄生関係をかなり安定した形で確立できることが分かった。事実、人類最初の諸文明は、帰属させた共同体から収穫物の一部を奪取し、その共同体が一年また一年と不定期間生存を続けるに足るだけのものは残しておくというやり方が可能になったとき、成立したのである。
文明史の基礎をなしてきた食物と寄生体のこの相互関係は、個人個人の体内での同じような関係と対応する。
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-----------------------------------2に続く
彗星
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